iwapenの日記

60歳にして考古学を学びに大学に入りました。また、社会や政治についても思いの丈を発信してます。

卒論に向けて 2月8日

土偶の役割を探求する研究史では、瀬口先生が書かれているように、ここ20年近く、いろんな説が出尽くしたことと、どれも決定打に欠けることで、停滞気味ということです。そこに、瀬口先生は、新しい形態的な観察視点と、図像的な観察視点で、新知見を見出し、結果的には以前にも唱えられてはいた依代説を支持されました。

 

僕が、研究史から考えたことは、土偶の役割を歴史・地域貫通的に一義的に定義することが難しいと思い、地域と時代を限定した役割を探るという課題を設定しました。

さらには、土偶の「動く」基本性質、モデル=コピー関係の存在から、モデル土偶が、かなり広域にその造形要素を拡散させる可能性が大きいということを仮説①としました。

また、そもそもモデル土偶は、何らかの経済的拠点集落で生み出され、その経済的交流をベースに土偶を中核とした文化的交流が進められるということを仮説②としました。

  そうした、仮説を具体的には中期・中部高地に適用し、モデルとしての棚畑遺跡の土偶(ビーナス)がどのように生まれどんな役割を果たしたのか、このエリアの経済的紐帯として黒曜石の存在も関連付けながら考えていくことを研究課題にしたいと考えました。

 

今後の作業
《釈迦堂遺跡土偶の観察》
1.頭部の形態・紋様の展開過程ー(仮説)Ⅲ類型4種の特定→図案化。
※ビーナスの頭頂部の渦巻きが、立体化し蛇体紋様に発展か?
2.顔のデザインの展開過程ー類型化→図案化。
→中期全体を通して残る顔。
(仮説)ビーナスの顔
3.胴部の紋様の展開過程→類型化→図案化
→ビーナス紋様との関連。
玉抱き三叉紋、ワラビ、渦巻き、対称弧刻紋

 

《顔面把手付土器の観察》
1.頭部デザインの展開過程→類型化と図案化。
土偶頭部との対照。
2.顔面デザインの展開過程→類型化と図案化。
→(仮説)ビーナス顔。
3.土器本体の紋様の展開過程→類型化と図案化。
土偶胴部の紋様との対照。及びビーナス頭部や胴部との対照。

 

《土器の紋様観察》
1.五領ヶ台中部地域の紋様と、北陸長山の紋様比較。
→(仮説1)ビーナスの紋様構成が出揃う。
1.狢沢から井戸尻、曽利までの紋様の展開過程過程
土偶・顔面把手・ビーナスの紋様との対照。
→(仮説2)狢沢期に、ビーナスの紋様構成が出揃う。

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以上、3つの観察作業(仮説2ならば)から、以下の結論を導き出す。
→縄文中期・中部高地は、五領ヶ台期に、ビーナスを生み出す素地を形成し、狢沢期に黒曜石流通の拠点集落となった棚畑遺跡で共同性の象徴としてビーナスを生み出し、以降、黒曜石ルートにこのビーナスを核とする文化を共有する勝坂文化圏が展開した。
その為に、繰り返しビーナスの造形要素(顔のデザイン、頭部や胴部の紋様)がこの地域各地で模倣され継承発展されていった。このベースは、棚畑遺跡の黒曜石。

→勝坂文化圏の根幹にビーナスを置いて文化圏を一元的に理解する新知見を提起。

ビーナス造形は、
人口急増期に拡散。=ビーナスを力に活力ある社会。
人口急減期に消滅。=ビーナスからほかの物を信仰対象に。石棒、埋甕、環状列石、仮面の女神