iwapenの日記

60歳にして考古学を学びに大学に入りました。また、社会や政治についても思いの丈を発信してます。

自分のアルゴリズムを構築しよう

私たちは、インターネットを「活用」する中で、AIに私たち人間の、とりわけ消費者としての嗜好、行動パターン、さらに思考様式までがハッキングされ、そのビッグデータを元にさまざまなアルゴニズムが構築されてきた。そして、今や、人間が、AIの持つアルゴリズムに釣られて、あるいは従って行動しつつある。

もともと人間は、複雑なことを考えているようで、実は自分の置かれた環境や立場に即して思考し行動する。特に置かれた立場に合わせて自分の行動や発言に自分で枠をはめてきた。本来なら、やるべきでないことでも、立場というものを言い訳に、簡単に不条理な行為に出てしまう。特に、管理職とかの経験者なら分かるだろう。まさにそれがアルゴリズムである。

これは立場の違う者から見たら、その人の言動は予測可能なステレオタイプ。時々、そのアルゴリズムからズレた言動をする人がいると、「おおっ!」と驚きの対象となる。と言っても、それもアルゴリズムで、想定されたその「意外性」を予め織り込んだ言動をする場合すらある。こんな劇のようなやり取りをやっているのが人間だ。それだけに、元来、人間の行動と思考は読みやすくパターンとして理解しやすい。つまり、簡単にそのアルゴリズムはプログラムとしてデジタル化可能だということだ。

それが、商品の消費を人生の圧倒的な活動の中心としてしまった現代人ならなおのこと、その思考と行動は類型化されている。だこらこそ、昨今の政治は、そうした人々の類型化された言動をアルゴリズムとして把握することで金儲けをしている広告代理店が、選挙戦略や政権戦略にコミットしてきたのだ。これが顕著になったのは小泉政権以来だろう。多くの人々のその思考と行動が単純なアルゴリズムに従っていることが分かってきた為に、どんなに酷い疑惑や失態を繰り返しても、どうすれば人々がそれを忘れ飽きていくのか見破られているのだ。安倍政権が長期化しているのはまさにその成果だ。

要するに国民主権など、今や絵に描いた餅になりつつある。主権は、企業と政権が握ってしまっているのだ。それも、私たちの思考と行動が類型化し、シンプルなアルゴリズムとなってしまっているからだ。しかも、そのアルゴリズムのコード自体が、企業や政治によってどんどん外から書き込まれている。加えて、同調圧力を自分たちで作り上げて、益々、思考と行動を単純化させている。

私たちに課せられた選択は、企業や政権にプログラムされてしまうのか、私たちが逆にそれらをプログラミングするかだ。後者の道を行くなら、「自分が決めた」とか、「これは自分の考えだ」とか、「自分の思いを大切にした」とか思ったときに、本当にそうか?何らかの外部化されたアルゴリズムに従ってパターン化した思考と行動を選択したのではないか?と疑ってみることだ。
また、いろんな人と話したり、誰かの書いたものを読んだとき、どこかで聞いたセリフだなとか、この発想よくあるとか、この言動は最近の流行り・傾向だなとか思ったことは無いだろうか。そうした視点で自他を見ることから始めよう。
それが、定型化されつつあるアルゴリズムからの脱却であり、自分のコードで自分のアルゴリズムを構築していく道だ。しかし、それは突拍子もない方法ではない。昔からある方法で十分だ。優れた本や論文を、斜め読みではなく熟読、つまり思考しながら読むことだ。さらに、論理的な批判と資料の検証ができ、自分なりの文章化ができれば、すでに自分のコードで思考のアルゴリズムを構築し始めていることになるだろう。


《私たちが、テクノロジーが生み出す気を散らす泡の中で行動するとき、そしてソーシャルメディアフィードが、自分と同様の考えを持つ人で構成されているとき、社会が変わることは期待できるのだろうか?起きることと言えば、アルゴリズムが私たちに促すように、結局行動してしまうことだ。これを打ち破るには現状に疑問を呈し、事実を分析して、自分自身の結論に達することが必要だ。しかし、そうしたことに割ける時間を持つものはいない。こうして私たちはFacebookマシンの歯車と化し、プロパガンダの影響を受け、おめでたいことに働いているアルゴリズムを意識することもない ―― そしてそれは私たちの思考プロセスの中に組み込まれているのだ。

自分自身の意志決定に対するプログラマーやアーキテクトではなく、アルゴリズムのユーザーとしての私たちは、自分自身の知性を人工的なものにしてしまう。Douglas Rushkoffが言っているようにこれは「プログラムするのかそれともプログラミングされるのか」の問題なのだ。もしケンブリッジ・アナリティカの事件と2016年の米国選挙から学んだものがあるとすれば、世論をリバース・エンジニアリングにかけて、結果に影響を与え、そしてデータ、ターゲット、そしてボットが誤った合意の感覚に導く世界を作り出すことは、驚くほど簡単だということだ。》

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